CPUアーキテクチャの歴史は、CISCとRISCの思想のぶつかり合いと、それぞれの時代の要件に合わせた進化の歴史です。
黎明期(1970年代~1980年代)
この時代は、各メーカーが独自のアーキテクチャを開発し、激しい競争を繰り広げていました。
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Intel 8086 / x86:
CISCアーキテクチャの代表格。IBM PCに採用されたことで、PC市場のデファクトスタンダード(事実上の標準)となり、今日のx86-64アーキテクチャの基礎を築きました。
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VAX(DEC社):
当時非常に強力な命令セットを持つCISCアーキテクチャでした。ミニコンピュータ市場で広く使われましたが、複雑さゆえにRISCの波に押されていきました。
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初期のRISCアーキテクチャ:
バークレー大学やスタンフォード大学で、単純な命令セットで高速化を目指すRISCの概念が提唱されました。MIPSやSPARCといったアーキテクチャが商用化され、ワークステーション市場で存在感を示しました。
PC市場の標準化とRISCの台頭(1990年代~2000年代)
PC市場が拡大し、Intelのx86アーキテクチャが圧倒的なシェアを確立しました。一方で、省電力性能が求められる新しい分野でRISCアーキテクチャが台頭し始めます。
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x86-64アーキテクチャ:
IntelとAMDによって64ビット化され、今日のPCやサーバーの主流となりました。互換性を維持しつつ、性能を向上させています。
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PowerPC(IBM, Motorola, Apple):
Macintoshに採用され、一時期はx86と並び立つ存在でした。高い並列処理性能を持ち、ゲーム機(Wii、PS3)やスーパーコンピュータ、組み込みシステムで生き残りました。
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ARMアーキテクチャ:
ARM社が開発した、モバイル機器に特化したRISCアーキテクチャ。省電力性能の高さから、携帯電話、スマートフォン、タブレットの普及とともに市場を席巻しました。
現代と未来のアーキテクチャ(2010年代~現在)
x86とARMが市場を二分する中、新しい波が生まれています。
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RISC-Vアーキテクチャ:
カリフォルニア大学バークレー校で開発された、**オープンソース**の命令セットです。ロイヤリティフリーであること、高い拡張性から、特定の企業に依存しない新しいエコシステムを形成しつつあります。IoTデバイスからサーバーまで、幅広い分野での採用が期待されています。
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ハイブリッド・アーキテクチャ:
Intelの最新世代CPUのように、高性能な「Pコア」と電力効率の高い「Eコア」を組み合わせる**ハイブリッド**設計が主流になりつつあります。これは、消費電力と性能のバランスを最適化する現代的なアプローチです。
各アーキテクチャは、それぞれの強みを活かしながら、PC、モバイル、サーバー、組み込み機器といった様々な分野で進化を続けています。